新社会兵庫ナウ

おんなの目(2025年3月26日号)
「高額療養費制度」は命綱

2025/03/26
  私は2022年6月にガンが見つかった。70歳になり、かかりつけ医から勧められ6年振りに検診を受けた。最初のCT検査で引っかかり、その後いろんな検査を受け、6月中頃にステージ3のガンと告知された。全く自覚症状がなかった。腹部にいっぱいガン細胞を育てていたようだ。(笑)
 7月中旬に婦人科医と外科医で10時間の手術。体力があったお陰で長時間に耐えられて、4つの臓器とともにガン組織を全部取り除いてもらえた。術後はかなり辛かったが、命が助かったことに感謝。4〜6週間おきの検診は続いているが、今、私がガンの転移もなく元気なのはラッキーが2つあったから。検診を受けたこととガンがどの臓器にも浸潤していなかったことだ。もし検診を受けていなかったら手遅れだった。
 ガンになるまでは病院へ行くことなどほとんどなかったので、退職してから払う国民健康保険料が高いなと思っていたぐらいで、まして「高額療養費」なんて気にもしていなかった。ところが今は、がん治療の薬代として毎回高額療養費の限度額1 万8 千円( 区分一般)を調剤薬局で払っている。大変だが、毎回薬の元値30万〜40万円(1錠約8千円超)の表示を見ると感謝しかない。もしこの制度がなかったら、私は医療費2割負担で毎回6万〜8万円の支払いになる。
 さらに、病院の窓口は別なので検査がある時は1万円前後かかる。一旦支払い、3ヶ月後に合算された超過分は口座へ振り込まれるが、病院へ行くときはいつも3万円持参が必要。入院費の限度額は5万7600円。3回入院したがとても助かった。これ以上限度額を引き上げられたら年金暮らしの私の生活はえらいことになる。
 この原稿がみなさんの目に触れるときには「高額療養費制度」の見直しが凍結になっていると信じたいが、もし限度額が引き上げられていたら、来年から私が払う薬代は2万8千円、入院費は6万9900円に。現役労働者も低所得者もかなりの引き上げで大変なことになる。
 「ガンは2人に1人」と言われる時代。「3人に1人は死亡する」と言われている。でも、私もまさか自分がその1人になるとは夢にも思っていなかった。ガンに限らず、誰にもこれから先の病気のことなどわからない。誰にも可能性がある。
 それにもかかわらず、健康保険料の削減や児童手当の拡充のための財源確保のためにと、命綱の制度の見直しが法改正を経ずに閣議決定だけで決めていいはずがない。
お金がない者は生きるのを諦めろというのか。私は高額薬を飲んでいても不安だが、まだ生きたい。
 結局、ガンや病気になっていない人、なってもそのお金が払える人がこの案を考えたのだろう。福岡厚生労働大臣は一部修正でも「『長瀬効果』を約1950億円見込んでいる」と述べた。受診抑制で医療費を節約するだろうと。
 財源は、大企業や高額所得者の優遇税制の是正や8兆円超の大軍拡中止で賄うべきだ。私の命、全ての人の命を守るために、高額療養費制度改悪は絶対に許せない。
(新原三恵子)