新社会兵庫ナウ

おんなの目(2024年11月13日号)
「慰安婦」への真の謝罪とは

2024/11/13
 韓国の日本軍「慰安婦」水曜行動に連帯し、月に1回姫路駅前で日本軍「慰安婦」を知らせるビラまきが行われている。姫路労音の関係者2人が主催していて、かれこれ15年続いている。ビラは関西ネットワークから情報を得て毎回新しく作られる。
 私は2015年の日韓合意に激しく怒って以来、毎回参加している。
 この日韓合意とは、簡潔にいえば、安倍政権が元慰安婦とその支援者を黙らせろと韓国政府に10億円渡したものである。当時の日経新聞に、たかだか10億円で韓国政府に黙らすことを約束させた安倍政権はよくやったと書かれていた。それを読み、私は心底怒った。
 ニュースで慰安婦や徴用工が話題にならないと、人はとても無関心だ。それがひとたびニュースになると、たちまち攻撃的になる。私は叩かれたことや、持っていたビラの束を叩き落されたこともある。言葉の暴力も何回も受けた。近寄ってくる人がビラを取るためか暴力のためかわからず、身構えてしまうこともある。そして、「この活動するのは韓国の人だから?」と、真顔で尋ねる人や、わざと言う人もいた。
 私は日本人だからこそ、自分の先祖たちの加害なのだから、取り組まなければならない活動だと思う。たとえ不都合な真実でも、歴史を修正し、あったことをなかったことにして、どこに矜持を持てというのだろう。そして、一方で、この問題は日本対韓国の問題なのだろうかとも思う。どこの国であれ、どんな人であろうと、非人道的な行為を糾弾するのは当然のことではないか。
 元日本軍「慰安婦」の金福童さんは、その後、人権活動家として活動し、慰安婦問題の運動を代表してきた人だ。彼女は2019年に亡くなったが、生前の様子がドキュメンタリー映画となっている。映画の中で、金福童さんは起床し身支度を整える。化粧水を丁寧に塗り、..で髪を撫で付ける姿は、真冬に匂う水仙の花のように、凛として美しかった。
 彼女は安倍晋三の言う「最終的不可逆的解決」に大きな期待を寄せていた。加害国の首相が過去を詫びるために国を代表して自分たちに会いに来てくれるのだと。それが、会いにくるどころか、和解癒やし財団という第三者機関を作り、金だけ与えるというものだった。金福童さんは「許す準備は十分できていたのに。金なんか受け取らない」と泣き崩れた。彼女にとって解決とは、加害の国を代表する者と直接会い、謝罪の言葉を聞き、来てくれたことを労い、許す言葉をかけ、手を握り合うことなのだ。慰安婦問題が公になって30年以上、日本から国を代表して誰も会いに来ていない。
 町行く人が言う。「慰安婦って金ばっかり欲しがる人たちでしょう」と。金ばかり欲しがる日本の国、この日本の人たちにとって謝罪とは、金をばら撒くことでしかないのかもしれない。
(大野恭子)